・・・こんな隠居の身で今さら気を張って、何を習ふといふ事もしたくありません。お寺詣りも結構だと思ひますが、仏の遣されたいろいろの物を、時々手入れしたりするだけでも、かなり時間がいります。

それに私は、老人のくせに生意気のようですが、生きてをる間は矢張り、時世におくれる老人でも、できるだけ若い人達から世の中の事を聞かせて貰って、死ぬまで世の中の勉強はして行きたいと思っています。
そんな心持なもので、御老人仲間にも入らず、まだ眼も悪くないので、夜は仏の遣されたいろいろの本や、皆様から送られる雑誌などを読んでいます。
自分の半襟なども自分で掛けるのですよ。

嘘のようでしょうが、仏が生前自分の事はなるべく自分でなさったので、私も昔から自分でできる事はなるべく次の者の手を借りずにしています。

御後へ紡いでまいります・・・

※ 原文のままの文字使いを使用しています。